熊本県 玉名市
礼に始まり礼に終わる

礼に始まり礼に終わる

このエントリーをはてなブックマークに追加

礼に始まり礼に終わる

 

私たちの行動を戒める言葉として古くから“男子、門をいずれば百万の敵あり”と言われています。そのような中で、敵になるかどうかわからない状態での交渉や対話の席で相手につけいれられる隙を見せてはいけません。護身が武道の目的と考えるならば、相手を不快にさせないことや攻撃的な衝動を起こさせないことが大切ですし、もし、攻撃的な兆候を察知したならば逸速く治めるためにも心を込めた「礼」が必要となるのです。

人間修行の場である空手道場に入るとき“未熟な自分を鍛えてください”という謙虚な気持ちを持って初めに「礼」をします。稽古が終わったら“今日もお陰さまで良い汗をかくことができました”と感謝の気持ちを持って「礼」をするのです。

私たちが人間的に成長するために指導してくれている師に対してはいつも感謝の気持ちを持って「礼」をするのです。

戦闘の技術として生まれた“空手のわざ”を人間形成の手段として生かしていくためには、組手稽古の始めには相手をしてくれる人の人格を尊重し、心を込めて「礼」をしなければなりません。相手の人間性を無視したような攻防を行うようでは稽古が成り立ちません。稽古の終わりには、相手をしてくれた人に対し感謝の心を込めて「礼」をしなければなりません。相手をしてくれた人のお蔭で全力を出しきって攻防の技を出すことができ自分の弱点と特徴を知ることができたのです。

形の稽古も「礼に始まり礼に終わり」ます。四方八方に仮想の敵を置き攻防の技術を錬るのです。始めに四方に気を配りながら自分の心を鎮め、力を臍下丹田に集中し「礼」をします。最後は四方に気を配りながら呼吸を整え「礼」をして終了します。「形の礼」は、集中に始まり、残心に終わると言ってもいいでしょう。

“負けて当然、勝って偶然”という言葉があります。たまたま勝てたからといって敗者のまえでガッツポーズなどして屈辱的な態度をとってはいけません。惻隠の情を持ってこころを込めて“ありがとうございました。またよろしくお願いいたします”と心に思い「礼」をするのです。

 

崇城大学教授

崇城大学空手道部総監督  山内洋一

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です